※出典:経済産業省 中小企業支援チラシ クリックして拡大。
2025年度の「事業承継・M&A補助金(引継ぎ補助金)」は、中小企業の事業承継やM&Aを支援するための重要な施策です。今年度は補助対象枠や要件が刷新され、事業承継やM&Aの計画を進める企業にとって活用しやすい内容となっています。当社では補助金の申請サポートやコンサルティングを通じて、経営資源の引き継ぎや経営統合(PMI)をスムーズに進めるお手伝いをいたします。
事業承継・M&A補助金(引継ぎ補助金)とは?
「事業承継・M&A補助金」は、中小企業が事業承継やM&Aを契機に、新たな挑戦や経営改革に取り組む際の経費を支援する補助金制度です。この補助金は、事業引継ぎの円滑化を促進し、承継後の企業の生産性向上や地域経済の活性化を目的としています。
主な対象となるのは、事業承継に伴う設備投資や専門家活用費用、M&A後の経営統合(PMI)関連経費、廃業に伴う原状回復費用などです。特に中小企業が成長し続けるために必要なサポートを幅広く提供しています。
2025年度は、刷新された「事業承継促進枠」や新設された「PMI推進枠」等が注目されており、活用しやすくなっています。また、補助率や上限額も企業規模や条件に応じて設定されています。
公式サイト【事業承継補助金公式サイト】では申請手続きや詳細な要件が公開されており、必要な情報を確認しながら計画的に進めることが可能です。この補助金は、次世代の経営体制構築や競争力の強化を目指す企業にとって役立つ制度となっています。
申請枠・補助上限・概要
申請枠 | 対象事業 | 補助上限額 | 補助率 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
事業承継促進枠 | 親族内承継、従業員承継、M&Aによる事業承継を対象。設備投資や経営資源の譲り受けにかかる費用を補助。 | 800~1,000万円※ | 1/2~2/3 | – 事業承継に伴う設備投資(生産設備の購入やオフィス改装等)が対象。 – 一定の賃上げを実施することで上限額が1,000万円に引き上げ可能。 – 承継計画に基づく設備投資で競争力を向上させる企業向け。 |
専門家活用枠 | M&A時の専門家(フィナンシャル・アドバイザー、仲介業者)を活用する際の費用や、表明保証保険料を補助。 | 600~800万円+200万円※ | 1/2~2/3 | – FA(フィナンシャル・アドバイザー)やM&A仲介業者の支援費用が補助対象。 – 必要な専門家支援を活用することで、事業承継やM&Aのリスクを軽減可能。 – 「M&A支援機関登録制度」に登録された業者の利用が条件。【※買い手支援類型の場合】 |
PMI推進枠 | M&A後の経営統合(PMI)にかかる専門家費用や設備投資を補助。 | 150万円(専門家活用型) 800~1,000万円(事業統合投資型) |
1/2~2/3 | – PMI(Post Merger Integration)を通じた事業統合プロセスを支援。 – 株式譲渡後、議決権の過半数取得が要件となる可能性あり。 – M&Aの効果を最大化し、生産性や業績向上を目指す企業に適した枠。 |
廃業・再チャレンジ枠 | 事業承継やM&Aの過程で廃業を選択する場合の原状回復費用、在庫処分費、解体費などが補助対象。他枠との併用も可能。 | 150万円 | 各事業費に応じる | – 廃業を計画する際のコスト(解体費や在庫処分費など)を支援。 – 「再チャレンジ」に向けた廃業コストの軽減が目的。 – 他の申請枠と併用可能で、事業承継後の負担を抑えるための枠組み。 |
事業承継促進枠
事業承継に伴う設備投資を支援する枠です。従来の経営革新枠は、新分野展開等の新製品や新サービスの開発が必須でしたが、刷新された事業承継促進枠は、既存製品の品質向上や効率化等も該当するか否かは現時点では未確定です。賃上げを行う企業は、上限額の引き上げが可能です。この枠は、生産性向上や雇用維持に注力する企業にとって非常に有益です。
現在、取締役に就任しており、5年以内に代表取締役に就任する予定の場合や、過去5年間で代表取締役に就任した場合等が補助対象要件になると思われます。
専門家活用枠
M&A時に利用する専門家の費用が補助対象です。特に、「M&A支援機関登録制度」に登録された業者の支援を受ける場合、信頼性の高いサポートを活用できます。また、表明保証保険料など、M&A取引のリスクを管理する費用も対象となります。
PMI推進枠
M&A後の統合プロセスをスムーズに進めるための枠で、PMI(経営統合)の取り組みを支援します。設備投資や専門家費用が対象となり、取得後の経営資源を活用して成長を目指す企業に適しています。この枠は新設され、M&A後の支援体制を拡充する重要な取り組みです。
廃業・再チャレンジ枠
廃業を検討する際に発生する費用の一部を補助します。原状回復費や在庫処分費などが対象で、他枠との併用も可能です。特に、事業承継の準備期間中に廃業する場合に活用しやすい制度です。
前年度までと2025年度の違い
事業承継枠:経営革新枠から刷新
2024年度までは「経営革新枠」として運用され、新分野展開、事業転換、業態転換、業種転換などの取り組みが補助要件として、事業の再構築を行うことに焦点が当てられていました。このため、事業承継に伴う設備投資や新たな取り組みを検討する際に、一部の事業者にとって利用が難しい側面がありました。
2025年度の「事業承継促進枠」では、補助要件が変更されるかは現時点では確定していませんが、親族内承継や従業員承継を含む事業承継そのものを円滑に進めることに重点が置かれると期待されています。これにより、代表者交代に伴う最新設備の導入による品質向上や、新たな運営効率化システムの導入といった取り組みが補助対象として認められる可能性があります。
PMI推進枠の新設
2025年度から新たに設けられた「PMI推進枠」は、M&A後の経営統合(Post Merger Integration: PMI)を支援する枠組みです。この枠では、以下の2つのタイプの取り組みが補助対象となっています。
- 専門家活用型:PMIを進める際に必要となる専門家(経営コンサルタント、統合プロセスのアドバイザーなど)の活用費用を補助。補助上限額は150万円で、経営統合に必要な専門知識やプロセス設計支援を受けやすくなります。
- 事業統合投資型:PMI後の事業統合プロセスを円滑化するための設備投資を支援。補助上限額は800~1,000万円で、一定の賃上げを実施する企業は上限額が引き上げられる仕組みです。
この枠は、昨年までの「経営革新枠 M&A類型Ⅲ型」に含まれていたM&A関連の支援を拡張・分離したものと考えられます。昨年までは、M&Aに関連する支援は新分野展開などの条件が付与されていましたが、2025年度のPMI推進枠では統合後のプロセスを支援すること自体に焦点が当てられています。
対象要件としては、株式取得後に議決権の過半数(50%以上)を承継者が保有していることが補助対象の条件に含まれる可能性がある点があります。これは、M&A後の経営統合を本格的に進めるためには、実質的な経営権の移行が必要であるという考えに基づいていると推測できます。また、外部専門家による支援を受けることで、企業文化の統合や従業員管理、業績向上など、統合プロセス全体を効率化しやすくなるメリットがあります。
2025年度の「PMI推進枠」は、これまで補助の対象外とされがちだったM&A後の取り組みにも焦点を当てた枠組みとして、事業承継やM&Aを通じて成長を目指す企業にとって有用な支援策となっています。
具体的な活用事例
事業承継促進枠
- 現在取締役として経営に携わり、5年以内に代表取締役に就任予定のケース
- 5年以内に代表取締役に就任し、事業承継計画の実行を進めているケース
次期代表取締役として、事業承継に向けた準備を進めるための取り組みが補助対象となります。最新設備の導入や、IT化による業務効率化、新市場への対応力を高める投資が可能です。- ケース1:アパレル衣料品製造業で、次期代表が高機能素材を活用した新ラインを立ち上げるため、生地裁断の自動化機器を導入。これにより、生産効率が向上し、新商品の展開が可能に。
- ケース2:鞄や革小物製造業で、手作業が中心だった工程に精密加工機を導入し、高級革製品の品質向上を図る。これにより、新規取引先の獲得に成功。
- ケース3:プラスチック製品製造業で、環境対応型製品(バイオプラスチック製品)へのシフトを目指し、新型成形機を導入。これにより、既存顧客への提供価値を高め、競争力を強化。
PMI専門家活用類型
株式譲渡により会社を取得した事業者が、統合計画を進めるために専門家を活用するケース
M&A後の経営統合プロセスを専門家のサポートで推進し、効率化や組織の安定化を図る。
- ケース1:製造業で、買収先工場の運営効率を高めるために専門家のアドバイスを受け、財務管理システムを統一。これにより、原価管理の精度が向上し、利益率が改善。
- ケース2:IT企業で、統合後の従業員管理システムを専門家の支援で構築。スキルマッチングを活用し、従業員のモチベーションを維持しながら業務効率化を実現。
さいごに
2025年度の「事業承継・M&A補助金」は、事業承継やM&Aを進める中小企業にとって、大きな後押しとなる支援策です。スムーズな事業引継ぎや、承継後の成長を目指す企業にとって、設備投資や専門家活用にかかる費用を補助してくれるこの制度は非常に有効です。一方で、補助金を最大限に活用するためには、事業計画の策定や申請書類の準備に専門的な知識と経験が求められます。
当社では、補助金の申請サポートをはじめ、承継計画の立案やM&A後の統合戦略まで、一貫したコンサルティングサービスをご提供しています。複雑な手続きを安心して進められるよう丁寧にサポートいたします。補助金活用をお考えの際はご相談ください。