先端設備導入計画は、中小企業が新規設備投資を行う際、市区町村から認定を受けることで固定資産税の軽減などのメリットを受けられる制度です。

これにより、設備投資にかかる税負担を減らし、成長に向けた資金負担を軽減することで、積極的な経営改善や競争力強化を支援します。
また、労働生産性の向上を通じて地域経済の発展にも貢献することが期待されており、政府や自治体による中小企業支援策の一環として位置づけられています。

この記事では、先端設備導入計画の概要・メリット・令和5年の法改正の内容等について解説します。

先端設備導入計画とは?

「先端設備導入計画」とは、中小企業が生産性向上を目指して設備投資を行う際に、市区町村から認定を受けることで、固定資産税の軽減措置などの支援を受けられる制度です。

この制度を利用すると、新規取得した先端設備にかかる固定資産税が3年間、通常の1/2に軽減されます。
これにより、中小企業が成長投資を行いやすくなり、設備導入の初期コスト負担が軽減されます。

また、かつてはものづくり補助金の加点項目にもなっており、認定を取得していくと採択されやすくなりました。(現在は補助金加点の対象外)

先端設備導入計画のメリット
  1. コスト削減:固定資産税が軽減されることで、年間経費削減できる。
    ※固定資産税は通常1.4%。例:設備2,000万円×1.4%×1/2軽減=14万円/年間。
    3年間で42万円軽減効果が期待できる計算。

  2. 生産性向上による競争力強化:最新設備の導入で生産性が向上し、企業の競争力が強化されることが期待されます。

賃上げ計画の表明による固定資産税の追加軽減措置

先端設備導入計画では、賃上げする旨を事業計画に盛り込むことで、固定資産税がさらに軽減される優遇措置が受けることができます。

但し、賃上げ方針は計画の新規申請時のみ追加可能で、計画の変更申請では賃上げ方針の追加は対象外になりますのでご注意ください。

(ⅰ)軽減率の拡大

賃上げ方針を計画書に盛り込むと、通常3年間1/2に軽減される固定資産税が、さらに軽減されます。賃上げ計悪を従業員に表明し、所定を申請書類を提出し認定を取れば、以下のように固定資産税の軽減率が拡大されます:

取得時期固定資産税の軽減措置
令和6年3月末までに取得した設備5年間にわたって1/3に軽減
令和7年3月末までに取得した設備4年間にわたって1/3に軽減

(ⅱ)賃上げ方針の要件

賃上げ方針の表明には、前年対比で1.5%増加し、従業員に周知する必要があります。
賃上げ率が年1.5%という数値は、ここ数年の中小企業施策(補助金申請要件など)の中で、よく基準となっています。(5~6年ほど前から1.5%、それ以前は1%が基準だったと記憶しています)

要件説明
賃上げ率給与総額を前年度比で1.5%以上増加させる必要があります。
従業員に表明従業員or従業員代表者に賃上げする旨を見せて説明する。

対象設備の種類と要件

(ア)対象となる設備の種類

以下の種類の設備が対象です。

設備の種類説明
機械装置生産性向上を目指す製造設備など。
器具備品業務効率化や生産性を高めるための備品。
建物附属設備事業用建物に設置される冷暖房や給排水設備など。
測定工具および検査工具品質管理に関わる測定・検査機器。
ソフトウェア業務効率化や生産性向上に役立つ業務用ソフトウェア。

(イ)対象設備の要件

対象設備は、以下の基準を満たす必要があります。

要件説明
最低価額各設備は定められた最低価格を超える必要があります(例:機械装置は160万円以上)。
投資利益率年平均で5%以上の投資利益率を見込むこと。
生産性向上年平均3%以上の労働生産性向上が期待されること。

先端設備導入計画の必要書類

先端設備導入計画の申請には、以下の書類が必要です。

1.先端設備等導入計画に係る認定申請書

計画の詳細を記載した申請書です。

2.認定経営革新等支援機関による確認書

計画内容が適切であることを認定支援機関が確認した書類です。

3.先端設備等に係る投資計画に関する確認依頼書

投資計画の内容や投資利益率の計算に関する妥当性を確認するために、認定経営革新等支援機関に提出する依頼書です。

4.(別紙)基準への適合状況

投資計画が基準に適合していることを示す書類です。

5.(別紙)設備投資の内容(必要に応じて使用する)

設備投資の詳細を記載した書類です。

これらの書類を準備し、設備設置場所の市区町村に申請を行います。
申請手順や必要書類は市区町村によって異なる場合があるため、(経済産業省のサイトだけでなく)各自治体の公式ウェブサイトや担当窓口で確認することをおすすめします。

申請にあたっての注意点

申請に関するルール

(ⅰ)事前申請必須

先端設備等導入計画の認定を受けるには、設備を取得する前に計画の申請が必要です。
設備を取得(設置)してから申請した場合、その設備に対して固定資産税の軽減措置は適用されません。

(ⅱ)導入促進基本計画の確認

設備を設置する市区町村が「導入促進基本計画」を策定している場合にのみ申請が可能です。申請を行う前に、設備設置予定地の市区町村にこの計画があるかどうか確認する必要があります。

申請手順のポイント

計画の策定・準備を行い、認定経営革新等支援機関確認書を取得する期間も考慮しましょう。(サポートを受ける認定支援機関により発行日数は様々です。民間コンサルや士業などでレスポンスの特急依頼すれば数日で取得可能なケースもあります)

2023年の法改正のポイント(改正前と改正後の違い)

2023年に法改正され、以下の通りに変わりました。

項目2023年度の税制改正以前2023年度の税制改正以降
固定資産税の軽減措置3年間ゼロ3年間1/2に軽減。賃上げ方針を含めた場合は最長5年間1/3に軽減
工業会証明書の必要性工業会の証明書が必要工業会証明書が不要。代わりに認定経営革新等支援機関の確認書が必要
賃上げ方針による追加軽減特になし賃上げ方針を計画に含めると、固定資産税が最長5年間1/3に軽減
2023年法改正による変更点

よくある質問

固定資産税は3年間ゼロではなかったですか?
かつてはそうですが、法改正されて変わりました。
工業会の証明書に取得の時間がかかっていましたが、本当にいらないのですか?
はい。かつては工業会の証明書が必要で、取得に1か月以上かかるケースも多かったです。しかし、現在は不要になっています。
本社は大阪市、設備設置は兵庫県神戸市です。どこに申請すればよいですが?
申請は設備設置場所の市町村です。本店所在地ではないのでご気をつけください。一方、経営力向上計画などのその他の多くの認定申請は本店所在地を管轄する行政機関であるケースが多いです。
経営力向上計画との違いは?
経営力向上計画は即時償却等によるメリット、先端設備導入計画は固定資産税軽減のメリットです。先端設備導入計画が始まる前は経営力向上計画も固定資産税の軽減があったと記憶していますが、現在は棲み分けされています。

サポート料金

15万円~(税別)
※補助金申請サポートをご依頼いただき、対象設備で計画策定する場合は7.5万円(税別)で対応いたします。

まとめ

先端設備導入計画を申請する際は、設備導入の2ヶ月以上前から準備しておくことをおすすめいたします。

申請フォーマット等は、経済産業省の公式サイトよりダウンロードください。