人事評価制度は、従業員の能力や仕事に対する姿勢などを、一定の基準を設けて評価し、その評価結果を賃金や役職等に反映させる仕組みのことを指します。
人事評価制度を導入せず、なんとなくで進めてしまうと、公平性に欠けたり優秀な従業員の離職に繋がることもあります。

2022年の中小企業白書の統計データをみると、人事評価制度を導入している会社・定期的に見直している会社は売上増加率が高く、10年以上見直していない会社は低いという結果が掲載されてます。

しかし、人事評価制度を導入している従業員数20名以下の中小企業・小規模事業者の割合は35%と4割にも満たないのが現状です。


この記事では、従業員数20名以下の中小企業・小規模事業者向けに、シンプル且つ明瞭で運用しやすい人事評価制度の導入・再構築の考え方について解説いたします。

人事評価制度の目的

会社にとって、人事評価制度の一番の目的は「組織の生産性を上げて、皆が豊かになること」と考えます。

従業員にとっては、公平に評価して欲しい、昇給して欲しい等の目的があるかもしれませんが、そのような不満の声に耳を傾けることが導入する目的ではなく、皆が納得する評価基準を作り、働きやすい環境を整備し、儲けることが大事です。

評価制度を活用し、人材育成に取り組み、会社のビジョンや売上・利益目標を達成することが本来の目的で、その前提がある上で、会社個々の人事面の課題を解決するための目的があるものと捉えています。

人事評価制度の導入目的

「組織の生産性を上げて、皆が豊かになること」
→人事評価制度を活用し、人材育成に取り組み、会社のビジョンや売上・利益目標を達成するために導入する。

その上で、下記のような会社個々の目的がある。
・会社のビジョン(理念)・目標・行動指針をより浸透させ、強い組織づくりを実現したい。
・やりがいと成長を実感できる会社づくりに取り組み、働いている人たちが自慢できる会社にしたい。
・地域No.1のニッチ企業として、世の中に貢献し続ける会社にしたい。
・成長して欲しい点と評価すべき点を明確にしたい。

人事評価制度の構成

人事評価制度は、「等級制度」「評価制度」「報酬制度(賃金制度)」の3つから構成されています。

等級制度

等級制度は、期待する役割などに応じて適切な等級を設計する制度です。
次の3つがあります。

①職能等級制度・・能力を基準として処遇を決定する制度。能力に見合った職務や成果を必要としない。年功序列型。

②職務等級制度・・職務を基準として処遇を決定する制度。1つの職務に特化するためスペシャリストの育成に適している。

③役割等級制度・・担当する業務(役割)ごとに等級を設定し、処遇を決定する制度。制度設計に時間がかかるが、柔軟性と納得感の高い制度になりやすい。

評価制度

評価制度とは、評価項目・評価基準を決めることを指します。
①評価基準を明確にすること、②評価基準を理解・納得すること、③(特定の業務に恩恵が偏る等がないよう)公平な評価となっていることが重要です。

報酬制度(賃金制度)

報酬制度(賃金制度)は、上記の等級制度・評価制度に基づいて、従業員の給与・賞与を決定する制度を指します。賃金表(テーブル)を作成し、評価結果によって、〇号棒アップし給与が〇円になる、〇に昇格する等の給与が〇円になる等、明確になります。

人事評価制度を導入する上での注意点

評価者(上司)と被評価者(評価される人)の双方が納得できるよう設計する

人事評価制度は、社長や上司が主導で進めていくことが多いですが、一番重要なのは被評価者(評価される人)が納得するかです。
評価項目は、社長や上司が一方的に決めるのではなく、被評価者(評価される人)の意見を聞きながら、一緒に作っていくことが大事です。

社長の想い(ビジョンや経営目標)で譲れない評価項目があることはよいのですが、被評価者(評価される人)自身が自分で決めることができる評価項目を設ける等、柔軟に決めていきましょう。

納得できないまま導入してしまうと不満が生まれやすいので、周囲への説明の機会や意見交換する機会等を設けましょう。

ただ単に、人事評価制度を導入するだけで終わらせない

人事評価制度が完成したら終わりではなく、人事評価制度を通じて人を育てる、そして生産性を上げて豊かになるという目的を忘れず、運用しましょう。

導入するよりも、正しく運用し定着させることを重視する

人事評価制度を導入しても、定着せず、形骸化してしまうケースも少なからず存在します。そして、時代や環境の変化と共に、評価制度も変化しないと意味のないものになってしまいます。

必要に応じて、継続的に改善し正しく運用できるよう心がけましょう。

会社の中長期的なビジョン・目標・行動指針・社長の想いとリンクさせた評価制度にする

評価項目は、会社のビジョン、目標、行動指針、社長の想いにリンクしている必要があります。
なぜなら、①会社の目標等を達成するために人を育てる、②人を育てるために人事評価制度を導入するという大前提があるからです。

そのため、会社のビジョン等が定まっていない場合は、先に定めてから人事評価制度を導入しましょう。

まずは評価制度から作成し、プレ運用しましょう

急いで導入してしまうと、うまくいかないことの方が多いです。

順序としては、①まずは双方が納得のいく評価制度とする、②その次に賞与に反映させる、③最後に賃金制度、等級制度と繁栄させる等、段階的に進めていき、途中で気づいたことがあれば、適宜修正し、定着できるようなプロセスで推進していくことをお勧めします。

まとめ

今回は、従業員数20名以下の中小企業・小規模事業者向けに、シンプル且つ明瞭で運用しやすい人事評価制度の導入・再構築の考え方について解説を解説させていただきました。ご参考いただけましたら幸いです。

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