補正予算は、当初予算では対応しきれない経済対策・物価高騰対策・災害対応などに充てるための「追加の予算」です。例年、秋〜冬にかけて編成され、臨時国会で審議・成立するのが一般的な流れです。

近年では、とくに物価高騰への対応や、中小企業の賃上げ・省力化投資を後押しするための各種支援策が、補正予算を通じて継続的に講じられています。2025年には、高市政権のもとで「総合経済対策」を裏付ける大型の補正予算案が編成されるなど、補正予算はマクロ経済運営において重要な役割を果たしています。

本記事では、補正予算がどのようなプロセスを経て成立し、その後どのように中小企業向けの補助金制度(ものづくり補助金・省力化投資補助金など)に反映されていくのかを、専門家の視点からわかりやすく整理します。

補正予算成立までのスケジュール(大枠)

  1. 1. 政府による編成方針の決定
  2. 2. 財務省の調整と予算案作成
  3. 3. 補正予算案を閣議決定
  4. 4. 国会への提出と審議
  5. 5. 補正予算の成立と執行

なお、高市政権のもとで編成された2025年度補正予算案は、2025年11月28日に閣議決定され、2025年12月16日に成立しました。

一般会計の歳出総額は18兆3,034億円で、このうち17兆7,028億円が経済対策関連経費と報じられています。財源としては、2025年度の税収上振れ分で見込まれる2兆8,790億円などを活用しつつ、不足分である11兆6,960億円を追加の国債発行で賄う構成です。
※いずれも執筆時点の公表情報・報道ベースの数値です。最新情報は政府発表をご確認ください。

1. 政府による編成方針の決定

補正予算は、まず政府がその必要性や方向性を議論するところから始まります。補正予算が組まれる主な理由には、次のようなものがあります。

  • 経済対策:経済を活性化させるための資金を投入すること。
  • 災害復旧:地震や台風などの災害からの復興費用を確保すること。
  • 物価高騰対応:エネルギーや食品の値上がりによる影響を受けた人々や企業を支援すること。
  • 政策変更:急な社会情勢の変化や新たな目標に対応するため。

政府の方針が決まると、各省庁が具体的な予算の要望を出し、それを基に補正予算の全体像が形づくられていきます。

2. 財務省の調整と予算案作成

各省庁から出された要望を基に、財務省が補正予算案をまとめます。この過程では、限られたお金をどの分野に優先して使うかを慎重に話し合います。

作成のプロセス:

  • 各省庁の要望を集めて、優先順位を確認。
  • 政府内で話し合い、最終的な予算案を作成。
  • 財務大臣がその案を総理大臣に提出し、内閣全体で了承される。

この段階で予算案の内容が具体化し、国会に提出する準備が整います。

3. 閣議決定

補正予算案が財務省で取りまとめられると、内閣全閣僚が出席する「閣議」で正式に決定されます。このプロセスを閣議決定と呼び、ここで補正予算案は政府全体の公式な方針として確定します。

閣議決定が行われると、補正予算案は国会に提出され、審議のステージに移ります。補正予算の規模や内容が報道で大きく取り上げられるのはこのタイミングです。

4. 国会への提出と審議

補正予算案が国会に提出されると、衆議院・参議院でそれぞれ詳細な審議が行われます。ここで国会が果たす役割は以下の通りです。

(1) 所信表明と代表質問

  • 所信表明演説:首相が補正予算案の背景や目的について国会で説明します。
  • 代表質問:与野党の代表者が予算案について質疑を行い、内容の妥当性や方針を議論します。

(2) 予算委員会での精査

補正予算案は衆議院・参議院それぞれの予算委員会で詳細に審議されます。

  • 与党:政府案を支持し、速やかな成立を目指す。
  • 野党:予算案の問題点を指摘し、修正や変更を求める。

質疑を通じて、補正予算案の必要性・実効性・優先順位が精査されます。

(3) 本会議での採決

予算委員会での審議が終了すると、衆議院・参議院の本会議で採決が行われます。

  • 衆議院優越:補正予算は予算案の一種であり、憲法の規定により、衆議院の議決が優先されます。

両院で可決されると、補正予算案は正式に成立します。

5. 補正予算の成立と執行

衆議院・参議院で可決され、補正予算が正式に成立すると、政府・各省庁は速やかに執行段階へ入ります。
補正予算は、景気対策や物価高騰対応など「緊急性の高い施策」を中心に構成されているため、執行の迅速さが非常に重視されます。

(1) 執行計画の策定

成立後、各省庁はそれぞれの政策目的に沿って、執行計画(予算の具体的な配分方針・実施スケジュール)を策定します。一例としては以下の内容が挙げられます。

  • 中小企業庁:補助金の公募スケジュール、審査体制、交付枠の設定
  • 経産省:エネルギー・GX関連の支援制度の運用方針
  • 国交省:インフラ整備や防災対策の執行計画

(2) 自治体・関係機関への配分

補正予算はスピード重視であるため、下記の自治体や支援機関などへ迅速に予算が配分され、実際の事務が動きます。

  • 地方自治体
  • 商工会議所・商工会
  • 中小企業基盤整備機構
  • 関連する助成金・補助金の事務局

(3) 補助金制度は「複数年度予算」で運用される

中小企業向けの主要な補助金制度は、1年度分の予算だけで完結するのではなく、複数年度分の財源を組み合わせて運用されるのが一般的です。

省力化補助金(一般型)やものづくり補助金もその典型で、「令和◯年度補正予算」などとを束ねた予算枠を使って、複数回の公募や採択が行われる設計になっています。

このように財源の段階から複数年度構成となっているため、公募開始・採択・事業実施・実績報告・精算払いといった一連のプロセスも、年度を跨いで進行していくのが通常の流れとなっています。

(4) 執行段階で重視される点

  • スピード感(迅速な執行)
  • 透明性(予算の使途・効果の公表)
  • 事業効果(KPI、事業化状況報告など)

特に近年は、補助金見直し担当大臣(財務大臣兼務)によって“事業化状況(フォローアップ)・効果検証” がより強化され、執行後のモニタリングが厳格になっています。

6. 補正予算が成立するまでの具体的なスケジュール

以下は、2024年(岸田内閣当時)を例にした補正予算成立までのスケジュールです。
年度や内閣によって日程は前後しますが、2025年度もおおむね次のような流れになると想定されます。

日付 内容
2024年11月28日 臨時国会召集
11月29日 首相の所信表明演説・閣議決定
12月2日~4日 各党代表質問
12月5日~6日 全閣僚出席の予算委員会
12月9日 補正予算審議入り
12月21日 会期末(臨時国会終了)

本予算と補正予算の違い

本予算は毎年1月頃に通常国会で審議され、4月から始まる新年度の年間計画として編成される予算です。長期的かつ安定的な政策遂行を目的とし、教育や社会保障、防衛などの基盤的な支出が含まれます。

一方、補正予算は予算編成後に生じた緊急事態や経済変化に対応するため、年度途中で編成されます。景気対策、災害復旧、物価高騰対策など、短期的な緊急課題への対応が主な目的です。

補正予算は規模が変動しやすく、本予算に比べ迅速な成立が求められる点が特徴です。

項目本予算補正予算
目的年度全体の通常運営、計画的な政策の遂行緊急対応(災害、景気対策、物価高騰など)
金額の規模約100~110兆円前後数兆円~数十兆円(編成回数による)
編成のタイミング毎年4月に向けて前年末~年度初めに編成必要に応じて年度途中に随時編成(秋ごろ)
審議期間通常3か月程度数日~数週間
支出の性質長期的・安定的短期的・緊急的

まとめ

補正予算が成立するまでには、①政府の編成方針の決定、②財務省による予算案作成、③閣議決定、④国会での審議、⑤補正予算の成立と執行という複数のステップを経ます。
これらは国民の税金を適切に活用し、経済状況や社会課題に迅速に対応するための重要なプロセスです。

中小企業向けの補助金制度も、こうした補正予算と当初予算を組み合わせた「複数年度の枠組み」で運用されるため、最新の予算動向を押さえておくことが極めて重要です。

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